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「日向さんに隠していること…ですか?」

 いったい何のことやらと首を傾げる戸部に、綾斗のことだとヒントを渡す。

「会長…? 会長のことで日向さんに隠していることなんて、な……ん?」

 右へ左へ何度も首を傾げて悩んでいた戸部は、気づいたらしく、目を見開く。

「えっ、もしかして…?」
「そのもしかして、で合っていると思う。綾斗の気持ちだ」
「ええ!? 会長、いつの間に!」

 ……ふむ。この反応。そして、隠しているという言葉で動揺しなかったということは、本当に知らなかったみたいだな。今回の事。でも、やっぱり綾斗が俺のことを好きだということは知っていたらしい。
 そういえば、何度となく何か言いたそうな顔で綾斗や俺を見ていた気がする。そういうことだったのか。気づかなかった。

「あ、あの、会長は山田なんかよりずっと日向さんのことを好きなんですよ! 本当に!」

 慌てて綾斗をフォローしだす戸部は、俺と綾斗が付き合ったということまでは知らないようだ。しかし、おそらく山田が反省室に入れられたのは知っているだろう。噂になっているだろうし、例の風紀の友人が教えてくれただろうからな。先程言いかけたこともこのことではないだろうか。
 それにしても。綾斗はまだ言っていないということか。山田のことも、俺たちのことも。

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