4

「別にいいだろ、キスくらい」

 キスくらいって…。眩暈がする…。

「なっなっ、破廉恥な!」

 日野が真っ赤になって眉を吊り上げる。綾斗も綾斗だが、日野も日野だぞ…なんだ破廉恥って。流石にそこまではないだろ。

「してやったらあ? だって会長、キスまだでしょ? ファーストキス」
「……え?」
「おい、ばらすな!」
「別にいいでしょー? 事実なんだから」

 にやにやと笑う村瀬の口から出てきた衝撃の事実。恋人がいない、恋愛事に興味はないとは思っていたが…キスくらいは澄ませているものだと思った。昔から容姿端麗の綾斗のことだ。どっかで奪われている可能性だってあったはずだ。

「綾斗…本当なのか?」
「……まーな」
「一途に志賀野のこと想い続けてきたからファーストキスまだの童貞ちゃんだもんねー?」
「お前馬鹿にしてんだろ!」
「だって事実だしー」
「だっ誰が童貞だって! 童貞ちゃうわ!」
「いや副会長に言ってないしキャラどうしたの」

 一人あわあわとしている日野に冷静なツッコミが入った。がくりと落ち込む日野だったが、俺は日野に構っている余裕がなかった。
 一途に思い続けてきたって……。恥ずかしくなって顔が熱くなる。
 

[ prev / next ]



[back]