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「でもさあ、会長なんであの子にしたわけ?」

 村瀬がふと思いついた様子で綾斗に質問を投げかけると、綾斗はすっと立ち上がり、何かの書類を持つと俺たちにそれを見せた。

「これって――」
「あいつ、我儘で自己中で、猫被って人を騙す常習犯らしいんだよ」

 それで前の学校を退学になっている、と一言付け加えられる。俺たちはうわあ、と顔を引き攣らせた。

「計画を知らない奴がいて、もし俺たちが構ったことで狙われてもこいつなら大丈夫だろ?」

 にやりと笑う綾斗。どこからどう見ても悪人顔だ。村瀬が楽しそうに笑う。

「さっすが会長だわ」

 俺は静かに溜息を吐いた。そして、再び山田の資料を眺める。――確かに、悪いことをしたという気持ちにはあまりならない。

「――そういえば、山田は?」
「知りたいか?」

 綾斗は更に笑みを深くする。な、なんだ…? 嫌な予感がしながら、俺は恐る恐る頷く。

「ぎゃあぎゃあうるせーから、反省室にぶち込んだ」
「反省室って…あの?」
「そう、あの」

 反省室とは、窓も何もない地下牢と言っても過言ではない場所だ。実際に入ったことはないが、どんな奴でもそこへ入れられればたちまち大人しくなると言われている。

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