▼ 22
山田を連れて去っていく綾斗の協力者たち。ここが俺と綾斗だけの空間になると、さっきが騒がしかったわけではないのに、今が異様に静かに感じた。
「日向」
名を呼ばれ、どきりとする。何か――というか先程の続きを言わなければならないのに、口が縫い付けられたように動かない。
「日向」
綾斗は急いたようにもう一度呼んだ。
「す、好き――かもしれない」
「なんだ、かもしれないって!」
綾斗ががくりと肩を落として俺の頭をぽかりと殴る。軽いものだったので勿論痛いなんてことはない。それでも俺はむっと顔を顰めて殴るなと綾斗を睨んだ。
「だって分からないんだ。確かに山田と親しくしているのを見るのは嫌だったけど」
そして愛しいと感じたのも本当だけども。なんとなく認めたくなかったし、この気持ちが恋というのかも怪しい。
「じゃあ、付き合ってみようぜ」
「は?」
「いいだろ。なんか文句あるか?」
「俺は親衛隊の隊長だぞ? 皆になんて言われるか――」
綾斗に協力したという親衛隊はきっと、少数だろう。しかも綾斗のところではなかったし。
しかし、綾斗は堂々と言った。
「それは問題ない」
にや、と笑う綾斗。俺は何が問題ないのかと眉を顰めた。
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