22

 山田を連れて去っていく綾斗の協力者たち。ここが俺と綾斗だけの空間になると、さっきが騒がしかったわけではないのに、今が異様に静かに感じた。

「日向」

 名を呼ばれ、どきりとする。何か――というか先程の続きを言わなければならないのに、口が縫い付けられたように動かない。

「日向」

 綾斗は急いたようにもう一度呼んだ。

「す、好き――かもしれない」
「なんだ、かもしれないって!」

 綾斗ががくりと肩を落として俺の頭をぽかりと殴る。軽いものだったので勿論痛いなんてことはない。それでも俺はむっと顔を顰めて殴るなと綾斗を睨んだ。

「だって分からないんだ。確かに山田と親しくしているのを見るのは嫌だったけど」

 そして愛しいと感じたのも本当だけども。なんとなく認めたくなかったし、この気持ちが恋というのかも怪しい。

「じゃあ、付き合ってみようぜ」
「は?」
「いいだろ。なんか文句あるか?」
「俺は親衛隊の隊長だぞ? 皆になんて言われるか――」

 綾斗に協力したという親衛隊はきっと、少数だろう。しかも綾斗のところではなかったし。
 しかし、綾斗は堂々と言った。

「それは問題ない」

 にや、と笑う綾斗。俺は何が問題ないのかと眉を顰めた。

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