17

「……じゃあ、移動しようかな」

 山田がにこりと笑う。愛らしい笑みではあったが、その裏が見えてしまった今としては、愛らしさの欠片もない。

「おら、行くぞ」

 後ろの奴がドスのきいた声で俺を急かす。なんとか誰かに連絡をとりたかったが、そんな隙がない。俺は大人しくついていくことにした。







「ここなら、人も来ないでしょ。特に、土日はね」

 連れてこられたのは、先程以上に人が来ない場所だった。

「……それで、俺に一体どうしてほしいんだ? きみは」
「さっきも言ったじゃん。アンタが邪魔なの」
「だが綾斗はきみに惚れているんだろ? それなら俺なんか――」
「それでもやっぱり目障りな存在なんだよね。……もういいや、やっちゃって」

 へいへい、と返事をして不良が笑う。腕を振りかぶり、殴られる――と目を瞑った瞬間のことだった。

「おい、何をやっている?」
「あ、綾斗!」

 山田の動揺した声。俺は目を開け、呆然と現れた男を見る。綾斗が顔を顰めて立っていた。

「綾斗ぉ! 僕、僕怖かった!」
「えっ」

 山田が素早く綾斗の胸に飛び込む。さあっと血の気が引いた。

「…どうしたんだ?」

 綾斗の声は柔らかい。山田の言うことを信じるのか? ――俺の方が、長い間一緒にいたのに。

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