14

「搗本!」

 搗本が目を丸くして俺を見る。意外そうな顔だった。

「あれ…志賀野先輩、俺の名前知っていたんですか」
「え? あ、ああ。まあ」

 口を開いて一番最初にそれ? 俺が何でここにいるのかとか、もっと何かあるだろう。俺は違和感を覚えたが、そこまで気にすることではないだろうと頭の隅に違和感を追いやる。

「呼び出されたのは、今回が初めてか?」
「えーと、そうなるのかな?」
「は?」
「あ、そうです。初めてです」

 怪しんで眉を顰めると、慌てて答えが返ってきた。……なんだ? 何かを隠してる?

「……本当に初めてか?」
「はい。何回も呼び出されてほいほい付いていくような間抜けな男ではありませんし、今さっきのような注意だけでは済まないと思いますよ」
「…まあ、確かに」

 搗本は納得していない俺を見て苦笑すると、あっと何かを思い出したように声を上げてスマホを取り出した。一度画面を確認してすぐに鞄に仕舞うと、ぺこりと俺に頭を下げる。

「すみません、ちょっとこの後用事があるので、これで失礼します」
「ああ、じゃあそこまで送――」
「いえ、大丈夫です! では!」

 俺の言葉を最後まで待たずに、びゅんっと走り去っていく搗本。俺は校舎裏に一人残された。

[ prev / next ]



[back]