13

 親衛隊に連れていかれる搗本を見たのは、その日の放課後のことだった。俺は慌てて後を追った。そうして辿り着いたのは人気のない校舎裏。
 見たことがある親衛隊の生徒――確か、日野と村瀬のところの隊員だ。俺はとりあえず様子を見ようと身を潜めた。この辺りは木が多く、隠れやすいのだ。そのため制裁が行われやすい場所でもある。

「生徒会の皆様に近づかないで!」
「皆様が迷惑に思っていることが分からないの!?」

 男にしては高めの声で搗本を責める隊員。ここからは搗本の顔が見えない。しかし、身を縮めて怯えているように思える。

「あの、俺は……」

 ぼそぼそと搗本が喋り出す。よく聞き取れない。耳を澄ませてみるが、結果は同じであった。

「言い訳はいいんだよ!」

 隊員の目が見開かれ、手を上げる。やばい、と思った。隊員が自ら手を出すか、あるいは事前に用意していた体格の良い男を呼ぶ可能性が高い。俺は飛び出そうとした。しかし。

「じゃあ気を付けてよね!」

 ――え?
 隊員はびしっと搗本に人差し指を突きつけると、そのまま去っていく。俺は呆然とそれを見送った。しかし、はっとして搗本に近寄った。

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