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「戸部は搗本を気にかけてやってくれないか。俺も搗本から目を離さないようにする」
「分かりました。風紀にも一応言っておきますね」
「頼む」

 戸部の友人に風紀委員がいるので、風紀は戸部に任せておくとしよう。
 俺はあいつらをどうにかするしかない。特に綾斗だ。……綾斗が何を考えているのか分からない。分からないと言えば、山田も良く分からない。精神年齢が低い子どものように見えるが、なんだかそれだけのようには見えない。……考えすぎか?

「日向さん、山田がこっちを見ていますが…」
「え?」

 声を潜めて言われた言葉に眉を顰める。戸部から視線を外して山田の方を見る。確かに山田はこっちを見ていて、視線が合った。山田はにっこりと笑う。それがなんだか恐ろしくて息をのむ。山田は隣にいる綾斗に身を寄せると、何かを口にした。親密な雰囲気に胸がざわざわと騒ぐ。この前から、なんだか山田と綾斗の二人を見る度にもやもやとする。
 二人を見ていたくなくて、視線を外した。昼食に頼んだ日替わり定食を食べ進める。――何か言いたげな顔の戸部は無視して。

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