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 それから一週間。綾斗との関係は良いとは言いがたい。むしろ、悪いのではないかと思うほどだ。一度山田との付き合い方を注意したが、聞く耳を持たずといったところだ。綾斗だけではない。なんと、生徒会役員は堂々と山田に構い始めたのだ。しかも、仕事を後回しにして、という噂つきで。
 まさか、いくら綾斗でも、仕事を放ってなんて、と思った。日野だって村瀬だってそうだ。ちゃらんぽらんに見える村瀬だが、仕事に対してはいつだって真剣だった。だから仕事ではなく山田を選んだおいうことが驚きでもあり、失望でもあった。

「……日向さん」
「……分かってる」

 戸部は言いづらそうに口を開いた。戸部の言いたいことは分かっている。俺は横目で山田を囲う生徒会役員を睨んだ。楽しそうに食事をしている山田。山田を取り合っている奴ら。そして、それを憎悪の目で見る生徒会の親衛隊たち。この一週間、山田を多目に見てやってくれと呼びかけたが、もう限界だ。もしかしたら、動き始めているかもしれない。山田たちをどうにかするしかない。

「日向さん、山田より、山田が親友だと連れ回している生徒の方が危ないかもしれません」
「……そうだな」

 山田は守ってくれる奴らがいる。しかし、山田が親友だと言っているせいで山田を好いている奴らに睨まれているため、その生徒――搗本を守る奴はいない。よって、搗本が狙われることとなるのだ。
 俺は溜息を吐いて綾斗を見つめる。――と、不意に綾斗が顔を上げた。綾斗は一瞬目を丸くする。そして、さっと山田に目を遣った。その瞬間何故かずきりと胸が痛んだ。

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