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 戸部は俺を見上げると、小さく首を傾げた。

「ところで、日向さん相手の名前とか知ってるんですか?」
「ええと、なんか普通の名前だったよな。田中?」
「山田です」
「そうそう」

 とにかく、俺は山田に会いに行くことにした。噂で名前などは聞くが、顔が分からない。俺はじっと戸部を見た。俺の言いたいことを察したらしい戸部は呆れたように口を開いた。

「……一緒に行きますか」

 俺は大きく頷いた。






 山田の教室へとやってきた。一年生らしい。いきなり呼び出すのはやめて、外から様子を窺う。

「彼が山田です」
「へえ、…まあ、顔は悪くないんじゃないか」

 一匹狼と呼ばれる男やバスケ部のエースと楽しそうに話している可愛らしい生徒が山田らしい。生徒会ほどではないが、人気者と談笑して周りから嫉妬の目を向けられている。しかしまったく動じていないところを見ると、中々に度胸がある。生徒会役員に対しても同じような感じだろうか。

「――日向?」
「え?」

 後ろから声をかけられ、振り向くと綾斗がいた。俺と戸部を交互に見て、眉を顰める。

「何してんだよ、こんなところで」
「綾斗は――彼に会いに来たのか?」

 俺はちらりと山田を見た。すると綾斗は一瞬何とも言えない顔になって、そうだと肯定する。



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