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「……はあ」

 一樹は呆れたように溜息を吐いて、椅子を持つと秀の近くに座る。

「で、今日はここで食べるのか?」

 秀が移動する素振りを見せないので、一樹は訊ねてみる。秀は帯広を一瞥して、肯定する。

「…分かった」
「じゃあ俺もここで食べよっと!」
「あ、おい、来んなバカ」

 一樹は顔を顰めて恭一を追い払おうとする。しかし、へらへらと笑って一樹の言葉を流す。そして、帯広の視線を感じ、瞬時に顔を強張らせた。

「誰、こいつ」
「ひえっ! おおおお俺は、その!」

 恭一はわたわたと体を動かす。しかし帯広にじっと見つめられ、顔を青くして固まった。

「……別になんもしねーよ」
「は、はい!」
「うぜー…」

 鬱陶しそうに呟いて視線を恭一から外す。ほっと息を吐いて体の力を抜かした恭一は、予想よりはるかに大人しい帯広のことを意外に感じた。これだけでは判断ができないが、秀の言うとおり、「良い奴」なのかもしれない。

「篠原も一緒に食べないか?」
「えっ! 私!?」

 実は隣の席にいた眞子は驚いて目を丸くする。秀はにこりと笑って続けた。

「俺、篠原とも一緒に食べてみたかったんだ」
「……はあああああ」

 一樹は顔を押さえて溜息を吐いた。眞子は戸惑いながらも小さく頷く。

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