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秀が教室に入ると、クラスメイトが一斉に秀に視線を遣った。いつもであれば熱い視線や有効的な視線を向けられるが、今日は違った。皆困惑した表情で秀を見ている。中には強張った顔のクラスメイトもいた。
秀は少し不思議がりながらも何でもない様子で、席に向かう。
「しゅ、しゅーちゃん!」
「小林、おはよう」
席に座ると、早速恭一が話しかけた。青い顔をしている。
「お、おはよう……ってそうじゃなくて! あ、あいつと話してたよね!?」
「あいつ? 一樹?」
「違う! 帯広!」
「ああ、帯広。うん、話してたけど」
クラスメイトは耳を澄ませて恭一と秀の会話を聞く。先程秀と帯広が話している姿が窓から見えて、親しげだったのが気になっているのだ。
「そういえば昨日も帯広のこと気にしてたな。友達になりたいとか?」
「はあ!? 無理無理無理!」
真っ青になると、恭一はぶんぶんと首を振る。秀は良い奴なのになあ、と残念がりながら呟く。恭一もクラスメイトも、秀の言葉を心の中で否定した。
「…で、なんであいつはここに? しかも朝から…」
「昨日教室に来ないかと言ったら来てくれたんだ」
「……しゅーちゃん…」
恭一は頭を抱えた。秀も秀だが、何故帯広は素直に来ているんだ。それも、翌日に。恭一は、秀が帯広に気に入られていることを確信した。
「頭が痛いのか?」
「うん……」
「薬貰ってくるか?」
「いいよ…」
違う意味で頭が痛いんだよ、と恭一は溜息を吐いた。
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