16

 翌日。秀と一樹はいつも通り二人で登校した。しかし、いつも通りではなかったのは、学校の様子だった。活気に溢れた廊下は、静まり返っている。
 一樹はなんだか嫌な予感がした。

「どうしたんだ? 何か静かだな」

 一樹とは違い、何故か分かっていなさそうな秀。きょろきょろとして不思議そうにしている。

「まさか…」
「おい」
「っ!?」

 背後から突然声をかけられ、一樹はびくりと肩を跳ねさせた。秀は動揺せず、あ、と口にして瞬かせた。

「帯広」
「よぉ」
「来たんだな」
「どっかの誰かさんが来てほしいっつったからな」

 固まっている一樹を興味なさそうに一瞥した帯広は、口角を上げて秀に話しかける。秀は嬉しそうに笑った。

「お、おい…秀」
「ん?」
「どういうことだよ」

 口を引き攣らせながら秀の肩に手を置く。来てほしい、とは。一体。頭が痛くなってきた。

「神崎が俺に会いてぇから教室に来てくれってな」

 にや、と笑う帯広。本当かよ、と横目で秀を見ると秀は直ぐに頷いた。確かに秀ならば何も考えずに言いそうなことだ。

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