14

「お前ってほんと、厄介なやつだよなあ」
「何で?」

 ダンゴムシから視線を外さないまま秀が訊ねる。一樹は目を細めて恨めしげに秀を睨んだ。
 
「言っても分からんだろ…つーか、早く帰るぞ」
「待ってくれ、もう少し」

 お前のもう少しは長いんだよ! と文句を言いながらも、一樹は待つ。秀が夢中でダンゴムシを観察してから数分。教室から眞子が出てきた。

「…え、えーと? 何をやっているの…?」
「えーと、お前は確か」
「あ。篠原。神崎くんの隣の席の」

 眞子は苦笑して名乗る。そう言えばそんな名前だったと一樹は頷いて秀に視線を遣る。

「今話しかけても、相手にされないよ。こいつ、ダンゴムシに夢中だから」
「だ、ダンゴムシ…」

 眞子は秀の手元を覗き込んだ。確かに、ダンゴムシだ。しかし何故ダンゴムシ。眞子は疑問に思ったが、今関わるのはやめておこうと思考を断つ。

「じゃあ、私、帰るね」
「――あ、篠原」
「え?」
「あのさ、今日、昼飯って教室で食った?」
「え、うん…」
「教室に、秀と小林いた?」
「うん、いたよ」

 眞子は一樹が言わんとしていることに気がついた。そして、ふふ、と笑みを浮かべる。バツが悪そうな一樹は、どうだった、と眞子に訊いた。

[ prev / next ]



[back]