11

 秀は帯広に別れを告げ、教室へ戻った。すると、どんよりとした空気をまとった男が目に入る。先程昼食を共に摂っていた恭一だった。秀首を傾げ、不思議そうに恭一の側へ寄る。

「どうしたんだ?」
「もう! どうしたんだじゃないよ! 折角今日は二人で食べられる日だったのにどっか行っちゃうしさ!」
「ああ…ごめん」
「どこ行ってたの?」

 秀は一瞬迷った。一樹は秀が屋上へ行っているのを知っているが、他に知っている人は帯広しかいない。元々立ち入り禁止の場所だ。あまり知られてはまずいのである。

「しゅーちゃん」
「……誰にも言わないって約束するなら」
「え! 二人だけの秘密、ってやつ!?」
「いや、一樹も知ってるけど」

 「ああ、そう…」恭一はがっくりと肩を落とした。そして苦笑すると、分かったと頷く。秀はそれを確認して、恭一に顔を寄せた。驚いた恭一が上擦った声を上げる。

「しゅ、しゅーちゃん!?」
「俺、屋上に行ってたんだ」
「へっ?」

 口元に人差し指を立て、秘密な、と念を押す。呆然としたまま、恭一は頷いた。

[ prev / next ]



[back]