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 帯広はちらりと秀を見る。不良と恐れられ、避けられる帯広に普通に近寄ってきたのだ。別に暴力行為などしていないのにサボり癖があるのと、この見た目で誤解されることが多いため、秀がこうやって普通に接してくれるのが嬉しい。一樹の存在は鬱陶しいが。しかし一樹が本気で秀を引き離そうとしないのは、帯広がそこまで危険な人物ではないと分かっているからであろう。

「帯広、教室には来ないのか?」
「気が向いたら行く」

 秀が訊ねると、帯広は即答した。秀はしょんぼりと眉を下げると、残念そうに言った。

「帯広が教室に来たら、すぐに会えるのに」

 それまで眠そうにしていた帯広は目を見開いて秀を見た。眠気が一瞬で吹き飛んでしまうくらいの威力があった。

「な、……は!?」

 ちなみに秀と帯広は同じクラスではないが帯広が教室にいれば、ここまで来なくていいのだ。つまりここまで来るのが面倒だと言っているのだが、帯広にはそこまで考える余裕がなかった。

「いつもここにいるわけじゃないし。俺は帯広とたくさん話したいのに」
「お前なぁ…」

 帯広は顔を手で覆った。隙間から見える肌は赤くなっている。

「分かった、明日は行くから……お前、来いよ?」
「もちろん」

 秀は嬉しそうに笑う。その顔を見ながら、帯広は溜息を吐いた。

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