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 恭一が推測している同時刻。一樹はむっすりとしていた。クラスメイトであり、友人でもある田上が昼食を買って教室に戻ってくると、いつもいない一樹がいるのを見て目を丸くした。席に座ると、声をかける。ちなみに一樹の前の席だ。

「なんだ、一樹。珍しいじゃん」
「……まあ」

 いつもであれば違うクラスの幼馴染みのもとへすっ飛んでいくというのに。一樹が不機嫌そうに返したので、あ、これは何かあったなと田上は確信する。一樹がここまで感情をあらわにするのは、大抵は秀柄みである。

「昼飯、食べねえの?」
「…食べる」

 一樹は未だぶすっとしたまま答える。田上の耳に不機嫌な一樹くんも格好いいと入ってきた。田上は苦笑する。一樹はモテる。顔は整っており、秀才というほどではないが、悪くはない。更に運動神経も面倒見も良い。ただし、その面倒見の良さは幼馴染みだけに発揮され、幼馴染みのことばかり考えているので、田上は一樹と知り合ってから、誰かと付き合っているのを見たことがない。
 告白されていることは間違いない。誰かと付き合わないのかと訊ねた時、幼馴染みのことで手が一杯で、そんなこと考える余裕がないという答えが返ってきたのを思いだす。しかし、嫌がっている様子ではなかった。それどころか、自分が世話を焼きたいように田上には見えた。

「幼馴染みくんは今日どうしてんの?」
「違うやつと食べてる」
「一樹も一緒に食べれば良かったんじゃ?」
「秀と二人で食べたいんだとさ」

 一樹は溜息を吐く。たった一日くらい良いだろうと田上は思ったが、口には出さなかった。
 

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