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 一樹も朝一緒にいられたということで昼食の件は了承した。ということで、約束通り、秀と恭一は二人で昼食を摂っていた。

「しゅーちゃんはさあ、彼女とかいないの?」

 恭一は前々から気になっていたことを訊ねる。すると、秀からは意外な言葉が返って来た。

「いない」
「昔は?」
「いない」
「……え!? いないの!?」

 恭一は目をぎょっと目を見開いた。秀の外見で今までいたことがないということが相当意外だったのだ。性格だって、ちょっと不思議なところがあってちょっと天然なだけで、悪くはない。恭一の知り合いだって、秀のことが気になっている人もいる。それなのに何故だと恭一は目を丸くする。

「告白はされたことたくさんあるでしょ? 好みじゃなかったとか?」
「告白……いや、されたことないけど」
「嘘!?」

 「あ、悪い、一回だけあった」秀はすぐに訂正する。一回というのもおかしな話だと思いながら、恭一は興味津々に耳を傾ける。

「どんな子だった?」
「一樹」
「ふーん、かず………ん? 一樹ちゃんって子?」

 良く耳にする名前が出てきて、恭一は動揺する。いやそんなまさかと冷や汗が流れる。

「お前も知ってるだろ? あの一樹だ」
「えええええ!? 告白されたの!?」
「ああ。えーと、小学生の時だったかな」
「…な、なんて返した?」
「俺も好きだって返したけど」

 懐かしそうにしている秀の隣で恭一は思った。秀の好きは絶対にそういう意味ではない。もしかして、あの男は告白時のそれを本気にしているのではないだろうかと。それで、秀に告白する人を邪魔しているのではと。

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