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「一樹」
「…なに」
「俺のこと迷惑じゃないの?」
「え――」

 一樹は目を見開く。まさかそんなことを言われるとは思っていなかったのだ。

「いつも疲れた顔して俺のこと見るから、迷惑なのかと思って」
「そんな……」
「だから、一日くらい、俺が小林と食べて、一樹は別の友達と…」
「……そんなこと気にしなくていい、馬鹿秀の癖に」
「馬鹿って失礼な」

 む、と口を尖らせる秀。一樹は苦笑してそれを見た。しかし、恭一は不満そうな顔をしている。今まで黙って見ていた眞子は、恭一がかわいそうになって、一樹に言った。

「ねえ、一日くらいいいんじゃないの?」

 一樹は余計なこと言ってんじゃねぇぞこの女という目で眞子を睨む。

「そうだよな! 篠原もそう思うよな!」
「うん…」

 途端にきらきらと目を輝かせて恭一が秀に顔を近づける。秀は一樹が口を挟む前に、小さく頷いた。

「じゃあ明日は小林と食べる」
「おい、秀」
「やったー! しゅーちゃんありがと!」
「大袈裟だろ。……一樹、明日は俺のことは気にしないで、ゆっくりしてくれ」

 喜む恭一。それを微笑ましく見ている眞子。一樹に優しく話しかける秀。――そして、一樹は一人、不機嫌そうにしていた。

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