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 一樹は昼休みになると、秀の教室に訪れた。一緒に昼食を摂るためだ。一樹が呼びかける前に、ドアの近くにいた男子生徒が秀を呼ぶ。

「おおい、神崎! 保護者が来たぞ!」
「…保護者って」

 一樹は顔を引き攣らせて呟くが、男子生徒の耳には届かなかったようだ。秀が顔を上げると、側にいた恭一も同様に上げた。

「あ、一樹。ちょっと待ってくれ」
「ああ」
「しゅーちゃん、たまには俺とも一緒に食べようよー」

 一樹の眉がぴくりと動く。秀は首を傾げて、不思議そうな顔で言う。

「小林も一緒に食べればいいじゃないか」
「……俺は二人で食べたいな、って言ってんの!」
「二人で? 別に――」
「残念だけど、それはできないな」

 一樹は別にいいと言おうとした秀の言葉を遮る。じろりと恭一を睨むと、恭一も睨み返した。ばちばちと見えない火花が散る。

「どうして?」
「こいつは俺がいないとだめだから」
「そんなことないでしょ」

 秀は二人を交互に見比べて、ばちぱちと目を瞬かせた。確かに自分は一樹がいなければだめだと思う。でもそれが一樹でなければならないことはないような気がする。

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