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(side:星矢)

 静かな遼先輩の部屋。遼先輩も言っていたけど、俺たち以外に誰もいないから、邪魔されなくていい。最初はこういう風に二人でいることは緊張したし、――…ちょっと怖かったけど、もう慣れてしまった。そして、慣れただけではなくこれが落ち着くまでになってしまった。
 遼先輩は優しい。告白された後、返事をするまでずっと待ってくれていたし、今でこそ普通に触ってくるけど、前は恐る恐るといった感じで、俺の様子を窺いながらだった。キスだって、できるようになったのは最近だ。だからまだ体の関係はない。俺だって男だ。好きな人を目の前にして手が出せないのは辛いということは分かる。でも、まだ――まだ、駄目なのだ。

「星矢?」
「え? あ…なんですか?」
「疲れてるなら寝ていいぞ」
「遼先輩は?」
「俺はお前の寝顔眺めてれば疲れが吹っ飛ぶ」
「そんなばかな」

 「ほんとだって」遼先輩はニヤニヤと笑いながら俺の頭を撫でてくる。…こういう時に、遼先輩が先輩なんだと感じる。大人の余裕、というか。どうして一つしか違わないのに、こうも差が出るんだろうか。遼先輩が特別なんだろうか。

「ここじゃ身体が痛いな。ベッド行くぞ」
「ベッド…」

 小さく呟くと、遼先輩は困ったように笑う。

「なんもしないから安心しろよ」
「……すみません」

 頭に手が乗って、ぽんぽんと叩かれる。そして遼先輩は寝室へと向かった。俺もそれについて行く。
 ベッドに寝転がると、遼先輩がじっとこっちを見つめてくる。

「お前、外に行くときは、俺に黙って行くなよ。女に絡まれるから」

 まだ気にしてたのかよ、と思いながら頷く。遼先輩もですよ、と言って目を閉じる。そうしているうちに、やっぱり疲れたのか――俺はうとうととする。

「星矢、おやすみ」

 くすりと笑う遼先輩の声が、遠くで聞こえた。


















fin.

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