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「俺が女に囲まれてんの見て、どう思った?」

 ニヤニヤしながら問うと、星矢はぶすっとして呟いた。

「……嫌でした」
「俺も」

 声を和らげて言うと、星矢はぶっきらぼうにそうですかと口にする。しかし耳と目元が赤く染まっていて、俺の心が満たされた。














「あのバスはやっぱり改善が必要だな」

 もう一度乗ってみて、改めて思ったことを言ってみれば、僅かに呆れた顔をした星矢が俺を見る。星矢がバスはやめるか訊いてきたのを断ったのは俺だ。どこが具体的に悪いとか、どういう風にしたらいいかとかを確かめるために帰りもバスにしたのだ。後で要点を押さえたものを作って報告しておこう。

「よし、さっさと部屋に戻るぞ」

 絡まれる前に。星矢も同じことを思っているのか、苦笑して頷く。そして早足で戻ったが、やっぱり俺たちは目立つのか、何回か声をかけられた。そのたびに俺が察しろと睨んだので、比較的はやく抜け出せたが。
 部屋に戻ると、俺はソファに座って息を吐く。隣をポンポンと叩くと、星矢がそこに座った。俺はすかさず星矢の肩に腕を回した。

「…こうしてる方が、落ち着きますよね」
「そうだな。邪魔者がいねえし」
「邪魔者って」

 星矢が眉を下げて笑う。俺は素早く顔を近づけてちゅ、と口づける。目を丸くした星矢に、にいっと笑いかけた。

「こういうことも好きにできるからな」
「遼先輩って、そういうことばっかり考えてるんですか」

 呆れたように俺を睨む星矢だったが、嫌がっているようには見えない。俺は口角を上げて、そりゃな、と口にした。

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