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「このアクセとかぁ、似合うと思いますぅ」

 厚化粧の店員が俺にすり寄ってきて、指輪を勧めてくる。化粧と香水の臭いがきついわ、喋り方も頭悪そうでイライラするわ、どうしてこんな女雇ってんだ? ここは。俺なら絶対雇わねえな。

「要らねえ」
「じゃあこれとかぁ」

 うぜぇ。近寄んな。見ろ、俺の顔を。どう見たって迷惑そうにしてんだろ。
 早くここから出てぇなと思いながら、星矢を探す。そして、眉を顰めた。――星矢が、女に囲まれていたからだ。べたべたと女の手が星矢の体に触るのを見て、むかむかとする。

「……触ってんじゃねえよ」
「えっ?」

 ウザい店員が怯えたような声を出す。ちらりと見れば、自分が睨まれていると思ったのか、化粧でわざとらしく赤くなった顔が青ざめる。ちょうどいい。さっさとどっか行け。
 俺は舌打ちすると、星矢に近づいた。






 がし、と腕を掴む。俺に気づいた女どもが、目を輝かせた。星矢は目を丸くした後、俺の顔を見て怖々と見上げてくる。おっと、やべぇ。星矢を怖がらせてしまった。俺は一回息を吐くと、星矢を抱き寄せる。

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