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(side:遼)

 俺は目の前の恋人を眺めて目を細める。嬉しそうに女が好んで食べるようなパフェに視線が釘付けだ。ちょっとはこっちを見ろよと思いながらも、笑顔の星矢を見られて嬉しい。
 パフェと一緒にきた珈琲二杯。俺は珈琲だけにした。甘ったるいもんは別に食べたくないし、軽食を食べるほど腹は減っていない。俺はパフェを食べる星矢を眺めておくだけとする。

「遼先輩、一口どうですか?」
「いや、俺は――」

 断りかけて、いや待てよと口を閉じる。これは、あーんというやつではないか?
 口を押さえてニヤニヤする俺を不思議そうにする星矢は、気付いていないようだ。

「じゃあくれよ」

 そう言って口を開くと、星矢が一瞬目を丸くして、はっとする。

「や、ちょ、あの――」
「なんだよ、くれねえのか?」

 ニヤニヤが止まらない。周りをちらちらと気にして顔を赤くする星矢。店内の女共も赤くなる。……見てんじゃねえよ、と少し気分が下がる。

「ほら」

 あ、と口を再び開ける。星矢は俺の口の中にスプーンを入れて、恥ずかしそうに目を反らす。……キスしてぇなぁ。流石にこんなとこじゃやらねえけどな。
 注目してくるのはウザいが、小さな声で盛り上がる奴らのおかげで照れた星矢を見られたということで、まあ許してやろう。

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