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 むっとしながら睨んでいる俺は、モテている男を僻んでいるように見えるんだろうな。

「……はあ」

 俺は溜息を吐く。ムカムカとする醜い心を押し込めて、俺は遼先輩に近づいた。
 足音と気配で俺に気づいたのか、女の子たちがこっちを向く。その瞬間、きゃあ、と声を上げた。……まあ、俺も顔のことは自覚している。顔を赤くして見上げてくる女の子たちに苦笑する。
 すると、遼先輩がぱちっと目を開けた。

「…星矢、おせえよ」
「すみません」
「お、お知り合いなんですか!?」
「あの、あなたも良ければ一緒に…!」

 女の子たちが遼先輩にべたべた触った手で俺に触る。イライラとする。ごめんと断ろうとした時。

「行くぞ」

 俺の腕を掴むと、女の子たちを押し退けて歩き始める。それだけで先程のイライラが消えていった。後ろで女の子たちの残念そうな声が聞こえた。






「はー、うざかった」

 女の子たちから大分離れると、遼先輩は手を放した。そして近くのソファに座ると、深い溜息を吐く。

「女は香水臭ぇな」
「あー、そういえば、親衛隊の子たちって香水はそこまでキツくないですよね」

 隣に座ってうんうんと頷く。すると、遼先輩が俺の肩に頭を乗せる。どきっと心臓が跳ねた。

「……大変ですね、会長」
「会長じゃねえ、つってんのに」

 そう言いながら、ふ、と笑う。遼先輩は学園でも囲まれたし、バスでも疲れさせてしまった。俺は申し訳なく思いながらも、こうして弱いところを見せてくれることに嬉しさを感じる。

「キスしてぇ」

 聞こえないふりをした。

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