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 しかしそれとこれとは話が別で。男とは流石に付き合えないというか…。俺が断ろうと口を開いた時だった。

「テメェなに言ってんだよ!」

 カナメが仁に食ってかかる。対する仁は平然とした様子で事実だし、と口にした。

「……ふーん」

 ハヤトがにやりと笑う。何かを企んでそうな、そんな顔。俺はちょっと怖くなって一歩後退る。でもハヤトが逃がさないとばかりに俺に近づく。

「俺も、ナオのこと好き」
「へ?」
「おい! ハヤト!」
「…煩いんだけど、さっきから」

 顔を歪めてカナメを睨むが、カナメは声を落とさずそのまま叫ぶ。

「俺だって――!」

 俺だって?
 カナメはそこまで言うと、はっとして口を覆う。その顔は真っ赤だ。
 ……え、ちょっと待ってくれ。今、何が起こっているんだ? 何でカナメは真っ赤で……何で皆睨み合ってるんだ?

「す、好きって、え?」
「ほんとアホだな。こういう意味だって」

 呆れたように言ったハヤトの口が近づいて、固まって動けない俺の口にくっついた。頭が真っ白になる。

「ハヤト! テメェ!」
「直人、こっち来い」

 仁に腕を引っ張られ、ごしごしと服で口を拭かれる。漸くキスされたんだ、ということに気がついて再び顔に熱が集まる。

「あ、あの、お、俺は友達が欲しいって言うか、その」
「恋人前提の友達ならいいけど」
「いやそれもちょっと…」

 ハヤトがチッと舌打ちする。こ、怖ぇ…。
 俺は誰かに助けを求めようと周りを見る。しかし、皆黙りこんで止めようとする奴なんていない。――そうだ、カナメ。カナメは。
 藁にも縋る思いでカナメを見ると、目を見開いたカナメは何かに葛藤するように視線を漂わせた後、意を決したように口を開いた。

「お、俺も、お前が好きだ」

 ええー!?
 ま、待ってくれ。友達は? 俺は友達と思ってても、向こうは友達と思っていないってことか? 体の力が抜ける。すぐ傍にいた仁がしっかりと支えてくれた。しかしその手は何だか熱くて――俺は顔を引き攣らせた。
 漸く認められ、友達もできて楽しくなったというのに、どうしてこうなったんだ!
 俺は熱い視線を注がれる中、一人嘆いていた。















fin.

強引に終わらせてすみませんでした!!(土下座)
リクエストしてくださった方、ありがとうございました!

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