26

 我が物顔で座っているカナメ。俺は周りを見回す。黒髪で眼鏡をかけている生徒、柳くんが真っ青な顔で俯いている。柳くんと一緒にいる奴らも微妙な顔で互いに視線を合わせている。

「おい」
「……え?」
「お前の…例のダチはこのクラスなのかよ」

 何だか気まずそうな顔で俺に訊いてくるので、俺は首を横に振った。

「……違う、けど」
「ふーん」

 自分から訊いた癖に興味がなさそうに頬杖をついた。俺がちょっとむっとした時、カナメが突然眉を顰める。なんだと思っていると俺をじろりと睨んだ。

「お前、ちょっと笑ってみろよ」
「へ?」
「笑え」

 ……え、なに、いきなり。笑うどころか何も言葉を返すことができず、呆然としているとカナメが目を細めた。

「お、面白くもないのに笑えない」
「ああ? 俺といるとつまんねえって言いてえのか?」

 そうは言ってないだろ! 面白いかつまんないかって言われればつまんないけど! …っていうのは、正直には言えないけど。

「そうじゃなくて…」
「じゃあ笑えるだろ?」

 流石にいらっとして、俺は声を低くして言った。「じゃあ、カナメも笑って見せろよ」
 カナメは目を丸くして、暫し固まった。ふふん、と口角を上げて笑う俺。

「え、なっ……」

 カナメが動揺したまま俺の顔を指差す。あ。思わず笑ってしまった。と思った瞬間、カナメの顔が赤く染まる。
 え、いや、ちょっと良く分かんないんだけど、何で赤くなった?

「わ、笑ってんじゃねえよ!」
「ええ!?」

 言ってることがおかしい! 笑っていいのか悪いのかどっちだよ!

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