▼ 26
我が物顔で座っているカナメ。俺は周りを見回す。黒髪で眼鏡をかけている生徒、柳くんが真っ青な顔で俯いている。柳くんと一緒にいる奴らも微妙な顔で互いに視線を合わせている。
「おい」
「……え?」
「お前の…例のダチはこのクラスなのかよ」
何だか気まずそうな顔で俺に訊いてくるので、俺は首を横に振った。
「……違う、けど」
「ふーん」
自分から訊いた癖に興味がなさそうに頬杖をついた。俺がちょっとむっとした時、カナメが突然眉を顰める。なんだと思っていると俺をじろりと睨んだ。
「お前、ちょっと笑ってみろよ」
「へ?」
「笑え」
……え、なに、いきなり。笑うどころか何も言葉を返すことができず、呆然としているとカナメが目を細めた。
「お、面白くもないのに笑えない」
「ああ? 俺といるとつまんねえって言いてえのか?」
そうは言ってないだろ! 面白いかつまんないかって言われればつまんないけど! …っていうのは、正直には言えないけど。
「そうじゃなくて…」
「じゃあ笑えるだろ?」
流石にいらっとして、俺は声を低くして言った。「じゃあ、カナメも笑って見せろよ」
カナメは目を丸くして、暫し固まった。ふふん、と口角を上げて笑う俺。
「え、なっ……」
カナメが動揺したまま俺の顔を指差す。あ。思わず笑ってしまった。と思った瞬間、カナメの顔が赤く染まる。
え、いや、ちょっと良く分かんないんだけど、何で赤くなった?
「わ、笑ってんじゃねえよ!」
「ええ!?」
言ってることがおかしい! 笑っていいのか悪いのかどっちだよ!
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