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 俺を叩くだけ叩いて去ったカナメ。俺はやり場のない怒りを抱えながら帰宅した。仁に連絡をしようかと思ったけど、連絡していることがばれたら怖いのでぐっと押さえた。カナメとか、他の奴が一緒にいる時なら会ってもいいだろうか。……喧嘩しそうだから、無理か。
 いつものように一人で学校へ行く俺。そういえばカナメとユウが同じ学校に通っているんだったな。学年もクラスも知らないけど。とりあえず同じクラスではないことは確実だ。見たことないからな。もしかしたら会わないまま一日が終わるかも。そんなことを期待していた俺だったが、教室のドアを開けて木端微塵に砕かれた。

「やっと来たか、ナオ」

 カナメが不機嫌顔で俺の席に座っていた。うおい! 机に足を乗せるな! 汚いだろ! いや、っていうかなんでここに!? どうして俺の席に!?
 俺はふらふらと自分の席に近づく。教室の空気は凍り付いていた。俺も何か恐れられてるし、カナメもこんなんだから怖いんだろう。窓から見える清々しい朝と世界が切り離されているみたいだ。他のクラスでは談笑が聞こえるだろうに!

「……なんで、俺の教室…」
「はあ? そんなの、聞きゃ分かるだろ。お前目立つし。まあ、俺はサボってばっかだったから知らなかったけど」
「……なんで俺の席に…」
「別にいいだろ、座ったって」

 良くねえよ。俺が座る席がない。とりあえず…足を退けて欲しい。俺がじっとりと恨めし気に見ていたからか、渋々といった様子で足を退け、立ち上がる。――かと思ったら隣の席に座った。おい! そこは柳くんの席だ! 



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