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「お前らはあれを見てないからこいつのことそんなに疑えるんだよ」
「あれ…?」
「小学生みてーな悪口言ったり頬を膨らませたり…とにかく、馬鹿なんだよ、こいつは」

 大袈裟に溜息を吐いて呆れた顔をするカナメ。……つまり、俺は馬鹿だから疑う必要がないってこと? それ、喜んでいいのか怒った方がいいのか…。
 皆はマジかよ、みたいな顔で俺を凝視する。しかし、その中でやっぱりユウだけは納得がいかないといった表情を浮かべていた。

「…でも、ジンに利用されるかも…」
「……それなら、こいつを見張っとけばいいだろ」
「見張るったって、そんなこと誰もしたがりませんよ」
「お――」
「俺、やってもいいけど」
「え!?」

 ユウの言葉にカナメが何かを言おうとしていたが、それに違う人物の声が重なった。やってもいい、の言葉に驚いてハヤトを見つめる。カナメもユウもぎょっとして目を見開くのが視界に入った。

「なっ……え?」
「だから、俺、見張るよ。ナオのこと」

 ハヤトは俺を見て、にいっと笑う。何かを企んでそうで怖い。ハヤトだったらカナメの方がいいな、扱いやすそうで。…あ、この中で言ったら、の話だけど。

「な、なんでハヤトが見張るんだよ!?」

 カナメがハヤトに向かって声を上げる。そういえば、さっきカナメも何か言おうとしていたな。もしかして俺がやるって言うつもりだったのか?

「別にいいだろ、俺がやっても」
「お、お前はナオのこと嫌ってたじゃねーか」
「いや、それ言ったら皆そうだし……っていうか、俺ちょっと興味あるんだよな」
「は?」
「ナオが喋る姿。表情もころころ変わって面白いし」

 な、なんだそれ。目を丸くすると、ハヤトが愉快そうにこっちを見たので、俺は顔を引き締めた。はは、とハヤトが声に出して笑う。

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