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「……本当に総長なんですか?」

 ぽつりと零す可愛らしい顔立ちをした男――確か、ユウだ。今まで黙ってこっちをずっと突き刺すような目で見ていたが、とうとうその口を開いた。その顔は訝しげで、俺を疑っているようだった。いや、他の皆にも……仁にも、カナメにも疑われてはいたけど、ここまでじゃなかった。

「カナメさんは騙されてるんじゃ?」
「はあ!? 俺がこんなやつに騙されるわけねえだろ」

 突然自分の名前が出たカナメはぎょっと目を開いてユウに視線を向ける。そして、騙されているなんて言われて黙っているわけがない。こんなやつ、と俺をぎろりと睨むように一瞥すると、ユウに言い放った。こんなやつって、またアホとでも言いたのか。ちょっと落ち込むぞ。
 カナメが食ってかかる中、ユウは冷静だった。カナメの方が立場が上だよな? なのにこんなに落ち着いて、しかもしっかり発言できるなんて。……まあ、カナメとか他のやつも俺には好き勝手言うけど。それは俺が敬われてないからで。カナメは一応、人望はあるはずだけど。

「……いえ、訂正します。総長は、確かに総長でしょう。双子の線も考えられますけどね」
「じゃあテメェは何が気に入らねえってんだ?」

 何故か怒った様子で問う。…何で怒っているんだ? 不思議に思っていると、ユウも同じだったようで、少しだけ動揺を見せた。

「…なんでカナメさんがそんなことを気にするんです?」
「なんで、って…そりゃ後々面倒なことになるかもしれないだろ」
「え?」

 ユウはその言葉を聞いて、先ほどより動揺を露わにする。

「まさか、まだ総長の座に座らせるつもりですか?」

 眉を顰め、非難めいた声でカナメに訊ねた。

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