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 最初はざわざわとしていたが、俺の言葉を聞き逃すまいと思っているのか、皆黙り込んでしまった。騒がしすぎるのもなんだが、こうやって静まり返るのもどうかと思う。俺は何度か噛みながら今まで喋らなかったのは親友の命令だと告げた。

「はあ?」
「だとして、何で従うんだよ? 何か弱みでも握られてんのか」
「……いやあ、なんというか……」

 握られているというわけではないんだけど。あいつ怒ったら怖いんだよなあ。親友の顔を思い出しうんうんと頷いていると、きっ、という声が聞こえた。……きっ?

「きめえんだけど、なんか…」
「確かに…」

 失礼だな君たち。でも今までの気持ち悪い、という暴言は悪意に満ちていた。今のは戸惑いが混じっているように感じられて、俺はちょっと嬉しくなる。いや、キモいって言われて喜んでるわけじゃないぞ、決して。

「…何で一度喋るとこんなに顔変わるんだよ、理解できねえ」

 ハヤトの呟きに、俺そんなに表情変わらなかったのかと不思議に思う。まあ、できるだけ心を無にしてたけども。
 ――ふと視線を感じて顔を上げると、カナメがこっちを睨んでいた。さっきまでドヤ顔してたのに一体全体何でだと不思議に思っていると、カナメが腕を組んで口を曲げた。

「…あの…?」
「テメェ、さっさとジンのこと話せよ」

 なんか怒ってるんだけどこの人…。怖いから睨まないでほしい。

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