12

「裏切りねえ……お前らはこいつのこと総長として見てなかったみたいだけど?」
「総長だとか総長じゃねえとかそんなの関係ねえ。チームに属してる限り……」

 ぎくりとしながらも早口で言う。……つーか、なんで知ってんだんなこと。まさか、話したのか? ナオが?

「じゃあ俺がナオ貰っていいか?」
「――は?」
「ちょ、じ、仁!」

 ふざけんじゃねえと口に出そうとしたが、それは叶わなかった。ジンの背中を叩いているナオの姿が目に入ったからだ。まったく痛くなさそうな――というか、実際痛くないんだろう。ジンは平然としていて、呆れ顔のまま振り向く。すると、ナオが子どものように頬を膨らませるから、俺の思考はいよいよ停止した。な、なんだ……? なんなんだ!? ナオは澄ました奴で、表情一つ変えなくて無口で、なんて誰が言ったんだ。……って俺だ。
 唖然としていると、ナオと目が合ってしまった。俺たちは暫し見つめあう。…アホ面だ。そこそこ顔はいいけど、アホ面だ。っていうか子供か。
 この妙な雰囲気はジンがナオの頭を叩いたことで終わった。その衝撃で空気が抜け、膨らんだ頬が萎む。その様子が面白くて思わず笑いそうになった俺。いやちげえだろ! と思いながらナオとジンを睨む。

「いてーな何すんだよ!」
「喋んなよこのアホ!」
「アホって言った奴がアホなんだよバーカ!」

 ……いや、え? 何だって?

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