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(side:カナメ)

 俺には嫌いな奴がいる。所属しているチームクラウンの現総長、ナオだ。尊敬していた前総長が何故か入ったばかりのナオを総長に指名したのだ。それでもまだ尊敬できる総長ならいい。でも、ナオは澄ました顔で、一言も喋らない。俺たちが暴言を吐こうと、なにしようと、顔色一つ変えない。それがなによりむかついた。
 このままずっと続くと思われた関係はある時終わった。今まで本当にロボットなんじゃないかというくらい表情を変えなかった奴が嬉しそうにスマホを見たのだ。チームの奴らも皆一様に動揺していた。誰かが彼女でもできたのか、とナオに訊ねるように言う。俺はまさかと思いながらできるわけねえだろ、と笑う。無理矢理作った笑みだ。すると奴は――顔をほんのりと赤く染めた。その時、俺の中で何かが崩れていく音がしたのだ。
 それからナオの動向を探っていた。何故かいつも途中で見失ってしまうナオを今日も追いかけて――遂に、見てしまった。敵チームの総長と仲良くしている様子を。

「おい……どういうことだよ」

 何で。何でそんなやつと会っている? 仲良くしてる? ――俺たちとは一言も話さない癖に、笑顔なんて浮かべない癖に。 
 ジンがにやりと笑みを浮かべる。カッと頭に血がのぼった。

「よお、誰かと思えば副総長さんじゃねえの」
「テメェはすっこんでろ……これはどういうことかって訊いてんだよ! ナオ!」

 責めるように言うと、ナオが一瞬だけびくりと震えた後、すっと目を逸らした。それがまた俺を煽った。俺は殴りかかりたくなる気持ちを抑えてナオを睨んだ。しかし、こっちを見ようとしない。

「…何だよ、俺とナオが仲良くしちゃいけねーわけ?」
「当たり前だろ! こんなの…こんなの裏切りだろうが!」

 ナオが顔を上げた。眉を寄せて、胡乱な目で俺を見る。その目は俺の心をぐちゃぐちゃに歪ませる。

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