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「……本当にナオだよな?」

 え、何で今更疑うんだ。と訝しく思っていると、仁がぼそりと呟いた。「やっぱりそう思うよな…」
 ……俺って本当に喋らない方がいいレベルでやばいの?

「ッチ、まあいい。とりあえず話を――」
「ナオは今から俺と遊ぶんだよ」
「テメェには言ってねえ。おい、ナオ。チームを抜けたくねえなら、…言い訳でもしてえっつうならこっちに来い」

 じろりと睨まれる。先程の間抜け面が嘘のように鋭い顔だ。俺は仁とカナメを交互に見遣る。二人は無言でこっちを見つめて来るだけだ。お前が選べ、ということだろうか。
 俺はぎゅっと手を握って、カナメの方に歩き出す。ごめん、という意味を込めて仁を見つめると、苦笑が俺に向けられた。

「仕方ねえな、遊びは今度な」

 振り向く。俺は大きく頷いた――ら、ぐいっと腕を引っ張られて体制を崩す。背中にカナメの胸が当たった。

「ふん、こいつはテメェより俺の方がいいみたいだな」

 …いや、そういうわけではないけど。何故かドヤ顔をしているカナメ。仁は面倒臭そうな顔をして、はいはいと返事をした。

「じゃあ俺帰るわ。またな、直人」

 どきっとする。ふ、不意打ちだ! 俺は名前を呼ばれた嬉しさで手を大きく振った。すると、べしっと頭を叩かれた。俺今日叩かれすぎじゃねえ!?

「何アホ面してんだよ!」

 振り向いた瞬間鬼みたいな顔したカナメに怒鳴られた。何で俺がアホ面してるって分かったんだよ! 背を向けてたのに! いや待って、そもそもアホ面なんてしてない! ぎっと睨むと、一瞬カナメが怯んだように体を引く。

「……くそ、とっとと行くぞ」

 そしてふいっと俺から顔を逸らすと、大股で歩き出した。…行くって、まさか。

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