8

 数日が経った。俺は相変わらずチームの奴らには嫌われていて、学校では避けられていて、仁とは仲良くしていた。そして、今日もジンと遊びの約束をしていた。
 俺は完全に油断していたのだ。

「おい……どういうことだよ」

 地の底から出たような低い声を出した主が俺を恐ろしい顔で睨む。俺が息をのむと、仁が俺を庇うように前に立つ。そして鼻で笑った。

「よお、誰かと思えば副総長さんじゃねえの」
「テメェはすっこんでろ……これはどういうことかって訊いてんだよ! ナオ!」

 カナメが一歩前に出る。俺は目を逸らした。どうしよう。どうしよう。焦りだけが俺を支配する。

「…何だよ、俺とナオが仲良くしちゃいけねーわけ?」
「当たり前だろ! こんなの…こんなの裏切りだろうが!」

 ――裏切り。信頼さえされていないのに、これは裏切りなのだろうか?

「裏切りねえ……お前らはこいつのこと総長として見てなかったみたいだけど?」
「総長だとか総長じゃねえとかそんなの関係ねえ。チームに属してる限り……」
「じゃあ俺がナオ貰っていいか?」
「――は?」
「ちょ、じ、仁!」

 俺は慌てて小声で話しかける。何を言っているんだお前はー! ぽかぽかと背中を叩くと、仁が振り向く。黙ってろというような顔だった。俺はむっと頬を膨らせる。――と、カナメと目が合った。頬を膨らませたままの状態で固まる俺。そしてカナメ。俺たちは数秒見つめあった。仁が溜息を吐いて俺の頭をべしっと叩く。ぶすっという音とともに口から空気が抜けた。

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