7

 部屋は俺が思っていたよりはるかに綺麗だった。それがまたアンバランスで俺は不思議な気持ちになる。

「そこ座ってろよ」
「え、あ、どうも」

 指されたところに腰を落とす。そわそわとしながら周りを見る。可愛らしいぬいぐるみが置いてあって、意外に思った。そういう趣味…には見えないし、妹でもいるんだろうか。
 ジンが近づいてきて、俺は視線を外す。こと、と音を立ててコップが置かれた。俺はぬいぐるみに関して何も言わなかったが、俺が見ていたところに視線を遣って察したらしい。ジンはあれは妹のだ、と言った。

「何歳なんだ?」
「五歳」
「五歳!? 歳離れてるんだな」
「まあな。すげー可愛いの。お前にも今度会わせてやるよ。きっとお前はすぐ仲良くなるぜ。精神年齢的に考えて」
「……? ……お前馬鹿にしてるだろ!」
「してないしてない」

 くつくつと笑うジン。俺は怒りながらも、この関係に自然と笑みが浮かぶ。
 でも、妹か。俺は一人っ子だから羨ましい。ジンの妹だから、きっとすごく可愛いんだろうな。

「ああ、そういえば今日はお疲れ」
「ああ……」

 俺は力なく頷く。ジンは苦笑しながら俺の頭をぽんぽんと叩いた。兄がいたらこんな感じだろうか。…って、もしかして五歳の妹と同じように扱われてる!?

「あっあの!」
「っなんだよ、いきなり叫ぶな!」

 思いのほか大きな声が出てしまって、ジンが眉を顰めて耳を押さえる。

「ジンの名前……あ、本名、なんていうんだ」
「俺? 仁。そのまんま」
「そのまんまかよ!」

 ちょっと友達の名前呼ぶのドキッとしちゃう! っていうのやりたかったのに!

「お前は?」
「なおと」
「お前もほとんどまんまじゃねえか」

 確かにそうだ。でもこれは俺が付けたんじゃなくて親友が勝手にナオにしたんだ。

[ prev / next ]



[back]