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 結局溜まり場はいつもと違う雰囲気のまま一人、また一人と帰っていく。最後に残ったのはカナメだった。何か言いたげに俺を見たかと思うと、苛立ったように出て行った。騒がしかった場所が一気に静まり返り、一瞬だけ虚しさと寂しさを感じる。しかしそれも一瞬のことで、俺は漸く解放されたと肩の力を抜くことができた。あとは、部屋を片付けるだけだ。
 ポケットの中が震える。俺ははっとしてスマホを取り出した。今は何時だろうか。通知された文を見るより先に時間を確認すると、あれからもうすぐ二時間が経とうとしていた。俺は目を動かして文を読む。

『もうそろそろ行って大丈夫か?』

 俺は顔を上げ、周りをぐるりと眺める。そこまで散らかってはいない。少し考えて俺は了承の返事を送る。

「あ、でもここらへんは危ないよな…」

 誰かと鉢合わせてしまったら大変だ。俺は慌ててここに来るなと送る。そして、その理由も打ち込んだ。すると、すぐに返事が返ってきた。

『じゃあ俺の家に来いよ』

 えっ家!? どきっとして俺は画面を食い入るように見る。行っていいのか? まだそんなに親しくない俺が行って! ちょっとだけ不安になりながら行きたい! とビックリマークを多めにつけてアピールすると、笑顔のスタンプが送られてきた。

「よしっ片付けだ!」

 俺はぐっと拳を握って雑誌を手に取る。うきうきと心を躍らせた。



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