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「関係解消したいんすけど」
「はあ!? まだ一日あるだろーが!」

 だめだだめだと言い放つ城野に内心舌打ちする。何で気づかないんだ、この人!

「今日はっきり分かったんで、明日はいいんですよ」
「まだ分かんねえだろ、もしかしたら――」
「だから! 借りのお付き合いの関係を解消して、ちゃんと付き合おうっつってんですよ!


 あ。
 思わず出てしまった言葉に俺と城野は硬直する。かっと顔が熱くなり、俺は慌てて言った。

「いや、今のはちがっ――」
「……へえ?」

 城野はにやりと笑う。いくら言葉で否定しても俺の顔は嘘を吐けなかった。

「長期戦になると思ってたが、そうかそうか」

 若干腹立たしいが、本当に嬉しそうな顔をするので、俺は黙ってその顔を見ていた。すると、顔を近付けてくる城野。ちゅ、と音を立てて唇が触れ合った。キスすればいいじゃんとは言ったが、本当にされると恥ずかしい。嫌悪感は全くなく、それどころかドキドキしているので、本当に、…本当に俺は城野が好きなんだと思った。

「…好きだ。お前は?」
「……う、いや、俺は…」

 至近距離で見つめられ、耐えられなくなった俺は顔を逸らす。しかし両手で頬を包まれ、顔を正面に固定されてしまった。

「す、好き……かも」
「かも?」
「ちょ、や、やめてください! あっ、ほら、早く出ないと!」

 いつまでもここに居るわけにはいけない。顔を引き攣らせて言うと、城野は舌打ちして、渋々といった様子で手を放した。俺はゴミを持って素早く立ち上がる。じと目で見られながら、俺たちは映画館を後にした。

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