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 食事中は主に生徒会について話していた。なんとも色気がないが、良く考えてみたら色気なんて皆無でいいので、そのまま話を続けていた。ついでに、前々から疑問に思っていたことを訊ねる。

「何で会長になろうと思ったんすか?」

 確かに人の上に立つのが似合うけど、協調性がない。仕事だっていつも真剣なわけではない。いや、真剣っちゃ真剣だけどなんというか…積極的じゃない。

「なってみないかと言われたからだな」
「それだけ!?」
「というか俺前年度も生徒会役員だったんだけどな」
「ええ? ……役職は?」

 全然知らなかった。誰が生徒会役員かなんて興味なかったし。生徒会長の顔すら危うい。でも確か佐藤っていう普通の名前だったから城野ではないことは確実だ。ま、会長は二年生徒は原則立候補できないことになっているけど。つまり例外はあるわけだが、そんな意欲があるわけじゃないだろうから違うだろう。
 でも、それなら何だろう。城野が誰かの下に就いているなんてあまり想像できない。副会長は二年生から立候補できたような気がするけど……どうだったっけ? 立候補できるなら、一番想像できるのは副会長なんだけど…。会計や書記は、……なんかしっくりこない。

「お前と同じ」
「へ? 俺と……ってことは書記!?」
「おー。ま、俺字上手いから」

 自分で言うな。と思うが、確かに城野の字は綺麗だ。想像はできないけど、納得はできる。

「だからお前が余計に気になったんだよなあ…」

 ぼそりと呟かれた言葉。視線は料理に落とされているが、口もとにちいさく笑みが浮かべられている。俺はぎゅっと胸を締め付けられたような感覚になって、どんな表情を浮かべればいいか困った。頼むから顔を上げるな、と願う。
 俺は手を握りしめる。この胸に芽生えた想いは――見ないふりができないほどに大きくなっていた。

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