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「な…なにっ」

 何で笑われているか分からなかった。良い気はしない。馬鹿にされているようだった。

「いや、子供どもみてーで似合ってると思って」
「はああ?」

 一瞬だけ目を丸くした俺は、眉を吊り上げる。

「ってそれって俺が子どもみたいだってことお!?」
「いいじゃねえか。可愛いから」
「いやいやいや! 良くない!」

 首をぶんぶん振って抗議するけど、城野はメニューを開く。無視かい! 俺は面倒になって溜息を吐き、言葉を飲み込んだ。そろそろ食べたいし。城野は俺に見やすいように、こっち側に向けて来る。別に反対側でもいいのに、と思いながら口には出さない。時々こっちを窺いながらページを捲っていく。肉――ハンバーグのところで手が止まった。俺の目は煮込みハンバーグに釘付けになった。

「……うまそー」

 俺は小さく呟く。目の前の城野が笑っている。俺はちょっとだけ恥ずかしくなりながら煮込みハンバーグを指差す。

「ライスのセットで」
「分かった。…俺は何にするかなー」

 城野は俺から視線を外すと、じっとメニューを見る。その顔は真剣だ。昼飯だけでこんなに悩む人久しぶりに見たな。城野が顔を下げているのをいいことに、俺はずっと観察していた。……サングラス外せばいいのに。見にくいだろ。女の子たちが寄ってくるかもしれないけど流石に食事中は…。

「よし、シーフードドリアにする。…ん? どうした?」

 にっと笑って顔を上げた城野のサングラスに隠れた目と俺の目が合う。どきりとして、俺はさっと目を逸らした。

「…いや、サングラス、取らないのかなと」
「あ、そういえばかけてたな。慣れて全然違和感なかった」

 ……サングラスって慣れるもんなのか? かけたことがない俺にはどういう風に慣れるのか理解できなかった。

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