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 ファミレスでもやはり目立った。帽子を脱いで、隠すものはサングラスだけになる。周りの女の子は俺たちを見てこそこそと何かを話している。水を持ってきたのは頬を染めた女の子。……サングラスなのに、なんで俺よりモテてるんだ! ちょっと傷つくぞ。

「…城野先輩って、どんなもん食べるんすか?」
「どんなもんって、別に普通だ」
「普通って? 例えば? 好きなものとか」

 自分でも何訊いてんだよと思ったが、口が止まらなかった。一瞬だけ目を丸くした城野は口角を上げた。

「ふうん、俺に興味があるんだ」
「興味っていうか…いや、別に普通の世間話でしょ」

 平静を装って言うと、城野はさらりと俺の言葉をかわして、目線を上に遣った。

「そうだな…かつ丼とか」
「……ふつう…」
「だから言っただろ」

 呆れたように笑って、グラスを取って水を飲む。からりと氷が鳴った。なんだろう、オーラが違うせいか、もっと高価なものを食べてると思っていた。かつ丼…まあ、美味しいけど。

「お前は?」
「え」
「お前の好きなもんだよ」
「…俺も普通のもの」
「普通って?」

 先程俺が訊ねた言葉。城野は意地悪く笑っている。

「カレーとか…」
「ハンバーグとか?」

 うんと頷くと、城野は噴き出した。

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