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土曜日。午前十一時に駅前の時計台で待ち合わせ。俺は早めに家を出て、駅前に向かった。待ち合わせ場所に着いたのは十分前で、まだ来てないだろうと思っていた俺だったが、時計台前にあるベンチに座っている男。サングラスにマスク、帽子を被って長い脚を組んでいる。
「……芸能人かよ」
いや、確かに顔を晒してたら寄ってくるだろうけど。それじゃ別な意味で注目浴びるから! …あ、でも待って。あの人はガチの芸能人かもしれない。背格好は似てるけど、城野とは限らないのだ。
じっと遠くから睨んでいると、スマホから顔を上げる男。こっちを見て、――目が合った。男が立ち上がる。……城野確定じゃん…。
俺の前まで歩いてきた城野。マスクをしたまま喋りかけてくる。
「よう」
「どうも。……あの、なんでそんなに顔隠してるんすか」
「だってお前目立つの嫌だろ?」
嫌だけど! 逆に目立ってるから! 俺は頭を押さえて、溜息を吐いた。
「……マスクだけでも外してくれるとありがたいんすけどお」
「ああ、そう言われると助かる。息苦しいから嫌なんだよなマスクって」
そう言いながらマスクを外す。変装っぽさがなくなり、普通のイケメンになった。
「ちなみに今のはマスク嫌いなのに俺のために付けて来てくれたんだとときめく場面だ」
「何言ってんだアンタ」
内心どきっとする。ちょっとだけ同じことを思ったせいだ。でもわざわざ口にするなよそれ。
俺は改めて城野の格好を見る。特別お洒落している風ではないが、シンプルできまっている。普通の男が着たら地味に思われそうなのに。俺の顔がチャラっぽいのでこういう服は似合わないんだよなあ。でも、反対に城野は俺が着るようなチャラチャラしたやも着こなすんだろう。羨ましい。
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