23

 次の日。俺は食堂は嫌だと城野に訴えた。理由を訊ねてきたので目立ちたくないのだと言うと、微妙な反応が返って来た。

「場所はあんまり変わらないと思うぞ」

 つまり、俺はどこにいたって目立つぜ! ってこと? ふざけんな、んなわけあるか。と聞き流した俺。昼飯を買った時も、まあ、確かに目立つなと思った。しかし、あんまり人が来ない中庭のベンチ。ここならば! と思ったのが十分前。

「キャー! 城野先輩と森くんだー!」
「今日は食堂じゃないんだ!」

 ……。
 買った弁当を無言で食べている今。

「…な?」
「……なんでだよ…」

 食堂より、あきらかに目立たない場所なのに。がっくりと肩を落とすと、隣で弁当をつついている城野が笑った。

「女子的には俺とお前のセットが良いらしい。まあ、目の保養ってやつだな」

 続いて、俺たちのこと尾行とかしてるんじゃねえの、となんでもないように言って、白米を食べる。尾行とか、怖いわ。でもどこに行ってもこんな感じだと、本当に尾行されてるのかもしれない…。

「つーか、気にしないで食べればいいじゃねえか」
「それができないから言ってるんすよ」
「俺が耳を塞いでてやろうか?」
「いらないです」

 ていうかそんなことしたら悪化する! きゃあきゃあ言う女の子たちを思い出してげんなりとした。

「本当に無理なら一緒に食うのはやめとくか?」
「え」

 意外な言葉に目を見開く。まさかそんなことを言ってくるとは思わなかった。じわりと胸に温かいものが広がる。俺は静かに首を振った。

「いや、大丈夫、です」

 ここで頷けばいいのにな。どうして大丈夫なんて言ってるんだろう。俺は苦笑した。

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