13

「――で、何すか」

 むすっとしている俺。生徒会室には俺と奴のみ。

「まあ、こっち来い」
「……ええ」
「そんなに嫌そうな顔すんなよ、傷つくだろ」

 ニヤニヤと笑みを浮かべながらの一言。なーにが傷つくだろ、だよ。よく言えるなそんな顔して。

「…何もしないならいいですよ」
「あー」

 あーって何。え、あーって何? 俺は目を細め、疑いの眼で城野を見る。

「大丈夫大丈夫」
「嘘くせえ…」

 呟いた瞬間、表情を一変させてぎろりと睨まれる。思わずひいっと悲鳴が出そうだった。こいつすげーイケメンだけど、顔が怖い! 強面っていうの? そんな感じ。

「いいから来い」
「…はーい」

 嫌な予感しかしないけど、行かないと怖いし、帰らせてくれなさそうだ。俺は渋々近づく。

「まあ座れ」
「はーい」
「お前適当になってねえか?」

 ギクッ。

「いえいえまさかそんな」

 はははと乾いた笑みを浮かべる俺を訝しげに見て、一度溜息を吐いてさっさと座れと目で促してくる。俺は言われた通りいつもの席に座る。

「それで――っ!?」

 背中に手が回り、引き寄せられ、ぎゅっと抱き締められる。俺は目を見開き、硬直する。温かい体温。密着した体。

「ななななな」
「こら、暴れんな。何もしねえよ」

 現在進行形で何かしてるよなあんた! と言ってやりたかったけど、何故か言うことができなかった。声が優しかったからかもしれない。俺は大人しくする。

「お前、ちょっと疲れてんだろ。肩の力抜けよ」
「……疲れてる? 俺が?」

 いや、全然疲れてない…と思うけど。俺は動揺して、視線をきょろきょろといろんな所へ動かした。

「自分では分かってねーみたいだけど、俺には分かる。お前は疲れてる」
「…なんで分かるんすか」
「ずっと見てたからな」

 不覚にもどきりとした。そして一瞬で我に返る。な。なんでどきっとしてるんだ俺は。普通はここはずっと見てたなんて気持ち悪い! と思うところだろ!

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