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「何でいんだよ…」
「何でって、これから生徒会室に行くからに決まってんだろ。で、何? 俺の好みの女?」
「いや別に知りたくないし…っていうか、放してくれませんかー?」
「特別に教えてやるよ」
「無視かい」

 むっと口を尖らせると、奴は愉快そうに笑い、ぱっと手を放した。そして俺の腕を掴むと、ずんずんと進んでいく。

「うわ、ちょ」
「さっさと歩け」

 だからって掴まなくたっていいだろ! 俺は子どもか!
 かなちゃんと月島先輩がぽかんとした顔でこっちを見て来る。うう、恥ずかしい。

「城野くん、楽しそうだね」

 いや先輩もっと他に言うことあるでしょ!? 思わずずっこけそうになった俺。隣で城野がそりゃあな、と笑って言った。そりゃあなじゃねえよ。何がそりゃあなだよ。
 かなちゃんがくすくすと笑っている。可愛いけど何で笑って……。俺はかなちゃんの視線を追って、かっと熱が顔に集まる。こいつまだ俺の腕掴んでる!
 腕を振りほどこうと動かしながらきっと睨みつける。城野は目を丸くした。何その顔。

「え、誘ってる?」
「え、頭大丈夫?」

 口が引き攣る。どうやったら今のが誘ってるように見えるんだよ。眼科行ってください頼むからホント。
 城野は俺の言葉にムカついたのか、それともタメ口をムカついたのか、はたまたその両方か、べしっと頭を叩いた後腕を放した。歩き始めると、俺たちもそれに倣った。俺は城野から離れ、かなちゃんの隣に並ぶ。あー、なんかもう疲れた。帰りたい。
 城野に叩かれた頭を擦っていると、かなちゃんが首を傾げた。

「痛い?」
「んー、いや、痛くないよ。軽くだったからね」
「そっか」

 本気で殴られたらもっと悶絶しているだろう。へらっと笑うと、かなちゃんはほっとしたように笑みを浮かべた。うん、可愛い。癒される。疲れが吹っ飛んで今日も頑張ろう、と思う俺ってホント単純。

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