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生徒会室に向かっている時のことだ。
「城野先輩と森くんって仲良いよね」
俺の自慢の笑顔がぴしりと固まる。にこにこと笑いながら言ったのはかなちゃん。仲良いって何だ? と一瞬仲が良いの意味が分からなくなる。
「いや…えーと? そんなことないけどお」
引き攣った笑みのまま否定すると、かなちゃんはちょっと眉を顰めて、口に手を当てた。
「うーん、仲良いっていうか、城野先輩が森くんを気に入ってるよね」
「俺虐められてるだけだよ」
「それは…」
「――あれは愛情表現だと思うよ」
後ろからかけられた言葉に足が止まる。かなちゃんも同時に足を止め、振り返った。月島先輩がにこやかな笑みを浮かべて立っている。
「月島先輩、こんにちは!」
「うん、こんにちは」
「……つ、月島先輩…愛情表現、とは…」
ひくりと口が引き攣る。
「きみたちは普段の城野くんを見たことがあるかな?」
「いや…ないっす」
「私もないです」
「そうだよね。城野くんとは体育で一緒になるくらいなんだけど、いつもつまらそうにしてるんだ。あんな楽しそうにしてるのを俺は初めて見たよ。だから間違いなく城野くんは森くんを気に入ってる」
「やっぱりそうですよね」
かなちゃんがうんうんと頷いて同意する。そして次の瞬間爆弾を落としてきた。「絶対好きな子を虐めちゃうタイプですよね」
「すっ……!?」
「分かる分かる。絶対そうだよ」
思わず叫びそうになった。俺の言葉は月島先輩に消される。かなちゃんが何か言ったと訊ねて来るが、俺は首を横に振った。
す、好きな子って。……いや城野は俺の顔が好みなだけだ。かなちゃんたちが言っているのは女の子に限っての話だ。安心しろ、俺。……と思うのに、何故だか少しだけモヤモヤする。
「森くん? どうした?」
はっとする。いつの間にか下がっていた顔を上げると、かなちゃんたちが少し離れた場所に立って不思議そうにしている。
「ごめんごめん、ちょっと城野先輩ってどんな女の子が好みなのかなあって考えてた」
へらっと笑って嘘を吐くと、二人は目を見開いた。不思議に思ったけど、俺は気にせず足を一歩踏み出そうとして、失敗した。襟首を引っ張られ、ぐえ、と蛙が潰れたような声が出る。
「知りたいか?」
げえええ! この無駄に良い声の持ち主は……!
「き、きのせんぱい……どぉも…」
「よう、今日も俺好みの顔してんな」
耳元で囁かれ、鳥肌が立った。
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