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「おい…」

 はっ! やべえ!
 俺は喋るなと言われたのを思いだした。ぎぎぎと首を向けると、まるで親の敵のような目で俺を見ていた。視界に入るなとも言われてたけど、お前が見てたら俺どうしようもないじゃん! と言いたいけど言ったらダメな気がして俺は口を閉ざした。急に顔を強張らせた俺を不思議そうに見上げてくるかなちゃんまじ天使。

「すみません、遅れました!」
「すみませぇん」

 続いて入ってきたのは副会長に選ばれた眼鏡の真面目そうな男と、ギャルギャルしい女の子。かなちゃんと同じく会計だ。俺女の子好きだけど、こういう派手な子はちょっと苦手なんだよね。でも俺茶髪だしピアスも開けてるし、制服も崩しまくってるから不良とかチャラいとか言われてるし、寄ってくる子もそういう子ばっか。まあ自分でもチャラいの自覚してるし、変える気はないんだけど。だってオシャレしたいし。顔も垂れ目がポイント高いとか甘いマスクって言われたことあるし、実際モテてるから整ってるのも分かってる。悔しいけどあの俺様暴君野郎には及ばないけどさ!
 あ、俺の顔とか喋り方腹立つってことは、あの会計のギャルにも同じ事を言うんじゃないか!? 自分だけが嫌われてるんじゃないなら嬉しい。

「…じゃ、始めるぞ」

 あれ!? 何故!?
 ガーンとショックを受け、固まる俺。つまりアレ? チャラいとかそういうの関係なく俺個人が嫌いってこと? 泣くよ!? 俺何かしたわけでもないのに…!

「森くん、体調でも悪い? 大丈夫?」

 はい、かなちゃん天使。

「大丈夫だよーちょっとぼーっとしてた」

 安心させるように笑いかけ、かなちゃんの隣に座ろう――としたら、ギャルが既に座っていた。じゃあ反対は……と見ると、俺様暴君野郎とかなちゃんに挟まれた席だった。うっわ、天国と地獄の間とか絶対に嫌だ! ならば仕方ないと違う席を探したけど、全員席に座っていた。どうやら席は一つ多いみたいで、俺様暴君野郎の両隣は空席だった。ふん、ざまーみろお前の横になんか誰も座りたくない、ってちょっと待って!? どっちを選んだとしても俺あいつの隣じゃねーか!
 早く座れというような視線を向けられる。俺のこと嫌いな癖にそこは妥協するのね! 分かったよ座ります! 真面目眼鏡(地味)の隣よりかなちゃんの隣がいいからそっちに座ろっと。
 かくして、顔合わせが始まった。

「俺は今期生徒会会長に選ばれた三年の城野誠二だ」

 俺様暴君野郎はちらりと横を見る。勿論俺の方ではなく、真面目眼鏡(地味)の方だ。
 っていうか、それだけ? 宜しく、とかないのかよ。無愛想だし。
 生徒会室が静かになる。真面目眼鏡は困惑しながら俺たちと俺様暴君野郎を交互に見る。ほら、空気悪くなったじゃん。俺様暴君野郎を睨むが、もうどうでもよさげに口をむっつりと閉じて腕を組んでいる。めっちゃ偉そう。

「あ、えっと、俺はこの度副会長になった、三年の月島稔っていいます。皆とは力を合わせてこの学校を良くしていきたいなと思ってるよ。宜しくね」

 真面目眼鏡はぺこりと頭を下げる。俺は感動した。思わずぱちぱちと拍手する。真面目眼鏡――いや、月島先輩! 素晴らしいよあんたは!
 月島先輩は照れたように首の後ろを掻く。

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