それはわたがしのように

俺様会長×チャラ男書記/not王道学園/共学/NL表現あり





 突然だけど、俺は小さい頃から習字を習っていた。そのため字は綺麗な方で、だからなのか生徒会書記にならないかと担任から勧められ、あれよあれよという間に役員になっていた。
 生徒会役員が全員決まり、改めて顔合わせを行うことになった。面倒くさくて行きたくなかったけど、行かないと更に面倒なことになるんじゃないかと友達に言われたので、俺は仕方なく生徒会室に向かったのだ。
 ドアを開けると、まだ一人しか来ていなかった。一番奥のデスクに腕を組んでこっちを見てくる精悍な顔立ち。確か生徒会長に立候補し、そのカリスマ性の高さと文武両道でもう一人の立候補生と大差をつけて生徒会長の座を勝ち取った男だ。俺は男になんて興味ないからどうでもいい。でも、とりあえず自己紹介とかしとかないと。それに、同じ生徒会の人間なら友好的な関係を築かないといけない。俺はへらりと笑みを浮かべる。

「こんちはー、えっと」
「テメェの顔見ると殴りたくなるから視界に入んな」
「……えっ?」

 何を言われたか理解できなくて笑みを浮かべたままぴしりと固まる。え、あれ?

「えーと、あのお」
「そのうぜえ喋り方も腹立つ。喋んな」

 ……なんだこいつ!? 確かにうざい喋り方かもしれないけど、じゃあお前はどうなんだよ! なんですかその偉そうな喋り方は! 亭主関白みたいな喋り方は!
 ぎろっと睨んでみるけど、会長とは認めたくないこの偉そうな男は俺から視線を外してつまんなそたいに頬杖をついた。
 ……帰っちゃダメかな? うん、帰ろう! だって視界にも入っちゃダメ、喋るのもダメって、俺いる必要ないもんな!
うんうんと一人頷いて、くるりと方向転換する。足を一歩踏み出したところで、すぐ横でガツンという音がした。一拍置いてちらりと横を見る。壁に小さな傷が出来ていて、俺は恐る恐る視線を下に下げる。ペンが落ちていた。あ、あれ。もしかしなくても今これを投げたよね? あとちょっと右にいたら、俺に当たってたよね?

「誰が帰って良いっつった」

 ぼっ、暴君だ!
 俺は安易な気持ちで生徒会書記になったことを死ぬほど後悔した。

「床でも座っとけ」

 なんてこと言うんだこいつ! 流石にぷちんときて、俺は言われたことを無視して椅子に座った。男の顔は見ないようにして。反抗心もあるけど、恐らく凶悪な顔をしてる奴の顔を見たら心が折れそうだからね!

「テメェ――」
「遅れてごめんなさい!」

 男が低い声を出し、俺が身を縮めた時、可愛らしい声が男の声を遮った。俺はぱっと顔を上げてドアの方を見る。肩まであるさらさらの黒髪は天使の輪を作り、大きな目と小さな鼻が可愛らしいこの子は……!

「かなちゃん!」
「あ、森くん。こんにちは」

 佐代かなちゃん。隣のクラスの子で、生徒会会計に選ばれた美少女だ!
 へらへらと顔を緩めて立ち上がると、椅子を引く。

「まだ来てない人いるからかなちゃんは全然気にしなくていいよ! ほら、座って座ってー」
「ありがとう!」

 えへへ、と笑うかなちゃんのなんと可愛らしいことか! どっかの俺様暴君野郎とは大違いだぜ!

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