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 話し終わり、清水の様子を窺う。流石に、男っていうことは隠したけど…。

「どう思う?」
「鈴谷は自分が悪いと思ってるの?」
「……おう」
「まあ鈴谷は悪いだろうね。でも悪いのは相手も同じだと思うよ。なにもしてないのに何で分かってくれないんだ、なんて」
「なにもしてない……っていうのは、分かんないけど。奈々美も気づいてたみたいだし」
「じゃあ鈴谷が鈍感なのか」

 鈍感? いや、俺は自分に好意がある女の子はちゃんと分かってたし、鈍感ではないはずだ。やっぱり辛島が男だからそういう考えに至らなかっただけだと思う。しかしここで鈍感じゃないと言えばややこしいことになりそうだから否定しないでおこう。

「鈴谷は辛島とどうなりたいわけ」
「うーん……ん!? え!? 辛島!?」

 あれ!? 俺名前口に出してた!? それとも何か言ってしまってはいけないことを!?
 口を押さえて混乱していると、清水がにやりと笑った。

「名前は出してなかったけど、さっきの話、どう考えても辛島のことだからね。辛島も鈴谷のこと特別扱いしてたし」
「で、でも男だぞ。そういう方には中々…」
「こんだけ人がいるんだ。そういう人が一人や二人いてもおかしくはないだろ。それが偶々辛島だったってだけ」

 そういうもんなのか…。確かに、世の中にはそういう人がたくさんいるわけで、それが全員大人とは限らない。身近な人じゃないとも限らない。

「同情とか、なんとなくとか、そういうので付き合うんだったら止めた方がいい。余計傷つけるだけだし、未来がない。こいつとなら家族を悲しませていいってくらいの覚悟がないと。男同士の関係は脆いからな。……ま、これは俺の考えだけど」

 俺はぎゅっと手を握りしめた。清水は苦笑すると、空を仰いだ。俺もそれに倣って空を仰ぐ。青く広々とした空。
 未来、か…。

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