18

「お、おいおい! 清水、ここ屋上だぞ! 屋上は鍵がかかってるんじゃ…」
「ああ、ほら。見ての通り」

 階段をどんどん上がって、遂に屋上まで来てしまった。しかし屋上には鍵がかかっていると聞いていたため俺は慌てて清水に声をかける。清水はくるりと振り向いて、俺に何かを見せた。しっかりとかかった南京錠だ。俺は溜息を吐く。

「かかってんじゃん」
「そう思うでしょ?」
「思うでしょって…」

 だからなんだよと続けようとした俺だが、がちゃ、と音を鳴らして開いた鍵にぎょっとする。

「ええ!? 今なにした!?」
「ただちょっと力を込めて開けただけ」
「そんなんで開くか! どんな怪力だよ!」

 清水は俺を一瞥すると、何故かもう一度鍵をかけた。俺は再びおいおいと叫ぶ。

「何してんだよ!」
「あーあー煩い。はい、開けて」

 俺の手首を掴むと、南京錠を俺に持たせる。体温で生暖かくなった南京錠と清水を交互に見る。開けて、って。無理に決まってるだろ。俺にそんな力はない。しかし清水からの無言の圧力が凄いため、俺は思い切り力を入れて引っ張った。がちゃ、と呆気なく開く鍵。力をこめすぎて右手の甲が手すりに当たった。

「いっっってえええええ」
「ほら、開いただろ」
「お前ちょっとくらい心配してくれよ…! っていうかどういうこと?」
「頭悪いなあ。この鍵、壊れてんだよ。最初から」
「えっ」
「この鍵はただの飾り」

 呆然としている俺の頭をグーで軽く殴って、さっさとドアを開け、屋上へと足を踏み入れる清水。……あいつ、どさくさに紛れて俺の頭殴りやがった。しかもさっき貶されたような…? いやもういいや。とにかく時間がもったいない。さっさと話を聞いてもらおう。
 

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